寿命は天命に任さねばならない

今、私にわかっていることは、自分の早い死を瞬間的に願うことはあるかもしれないけれど、自殺してはいけない、ということである。

曽野綾子さん「寿命は天命に任さねばならない」(1998年10月撮影。写真:本社写真部)

人間は生き方において自分の行動に責任を取り、常に自分自身の人生の主人でいなければならないのはほんとうだが、寿命は天命に任さねばならない、ということだ。

あらゆる動物はそのように生きているのだし、人間もまた動物としての運命に生きている。人間だけ特別でいいということもない。

生も一人だが、死も一人だということだけは明瞭にわかっている。そういう運命になった時、別に自分だけが不幸なのではない、と自分に言い聞かせる叡知(えいち)を若いうちから持つようになることだ。