曽野さんは、どんな人でも「一人で生きる姿勢が必要」と言いますが――。
親からの独立、離婚、配偶者との死別など…長い人生、いつかは一人になることを考えて不安に思う人も多いのではないでしょうか。「人間は誰も中年、老年、それぞれの年代において一人になる可能性がある。それに備えることは実に重大な任務だ。」と話すのは、作家、曽野綾子さん。夫、三浦朱門さんが亡くなってからはじまった一人暮らし。曽野さんは、どんな人でも「一人で生きる姿勢が必要」と言いますが――。

誰もいない一人の人生を生きる

私は一生を通じて一つの姿勢を通して来た。

賢かったからでもなく、出世のためでもない。

私は自分が小心で不幸に耐えにくい弱さを持っていることを自覚していたから、いつもそういう自分に備え続けていたのである。

それは常に最悪を予想しながら生きるという姿勢であった。

人生の後半に、気の合う伴侶、親しい友だち、親戚などに囲まれて暮らせればいいけれど、なかなかそのようにはならない。

死別もあり、離別もある。喧嘩別れもある。頼っていた母が、まだそれほどの年でもないのに、認知症になることもあれば、予定の中になかった地震や津波で文字通り家を失うこともある。