バロック音楽は貴族のための癒し?

N)何か切ない話ですね。ところでバロック音楽といえばバッハだと思いますが、そのバッハも貴族のために癒しの音楽を書いたと言われています。実際はどうだったのでしょうか。

M)もちろん、そういう部分もあるか思いますが、別の見方をすると貴族だけに限らず全ての人に対して癒しの音楽を提供していたと思います。
バッハが考え出した、全ての調で美しい響きの曲を作れる平均律だったり…。この平均律を編み出したのが本当に素晴らしいと思います。
そして、その根本にあるのが、当時の哲学や科学の存在だった思います。当時の哲学や科学は今よりずっと芸術に寄り添っていたと思います。何か一緒に作用しているような…。
バッハはそれらを上手に結びつけるような音楽の手法―平均律もそうですけどーを編み出したと思います。

N)やはり平均律を編み出しとことは凄い事ですか?

M)はい。不快な音列がなくなるというか。平均律だと、どの調でもすごく調和をもたらす音楽が作れますから。それ以外にも対位法とかフーガとか、それまでとは全然違う、音楽の組み立て方がすごく科学的なのです。

N)そういう意味ではバッハはバロック音楽の中では異質なのですか?

M)私はそうは思いません。バッハ自身はその時代にきちっと溶け込んで生きていたので、彼だけが異質というよりは、そういう、時代の流れだったのではないかなとは思います。ヘンデルも綺麗な音楽を書いていますしね。