愛くるしい顔でドラムを叩いてた

井上 撮影現場楽しかったね。

加藤 吹山は元気いっぱいの老人だから、順ちゃんはいつも通りのテンションでいいけど、こっちはうっかり乗っちゃいけないから。一緒にいると、ついいつものノリになっちゃう。

井上 いうなれば、正月恒例の『新春かくし芸大会』のノリ。「刑事コロンダ」や「インディ・ジューンズ」といったパロディドラマをやらせてもらってた。

加藤 懐かしいねぇ。

井上 僕はかくし芸大会に出演が決まった時に、加トちゃんの力を貸してほしいってお願いしたんだよね。なにしろ加トちゃんが出ると、100倍くらい面白くなるから。

加藤 アドリブで膨らませて。

井上 途中で我慢できなくなって噴き出しちゃって、何回も撮り直しになった。だから、温厚なディレクターに「いい加減にしろ! 僕だっておかしいんだ!」って怒られちゃってね。

加藤 あの番組ではじめて順ちゃんと一緒に仕事をしたんだよな。知り合ったのは、お互いに無名の頃だったけど。

井上 僕がスパイダースを率いる田邊昭知さん(現・田辺エージェンシー代表取締役)から「一緒にやらない?」って声をかけられたのは1963年、16歳の頃。当時、銀座ACB(アシベ)とか、上野のテネシーなんかのジャズ喫茶で演奏してたんだけど、全然売れないんですよ。ある時なんてお客さんは3人。メンバーのほうが多かった。(笑)

加藤 そういう時代だった。俺は18歳で「桜井輝夫とザ・ドリフターズ」のメンバーに加入して。その頃から長さん(いかりや長介さん)とは一緒だったけど、小野ヤスシがいたりして、最終的なドリフターズとは顔ぶれが全然違ってた。スパイダースとは、ジャズ喫茶で交互に演奏する間柄だったんだよな。

井上 60年も前の話。僕は自分のステージがない時は、ドリフターズの演奏を見て笑ってた。加トちゃんは今と変わらず、愛くるしい顔でドラム叩いてたね。