安心できる物語が求められている

トミヤマ そうですね。些細な日常を描くマンガは昔から存在していましたが、それがメインストリームにも流れ込んできています。そりゃあわたしが『ハッピー・マニア』についてどれだけ熱く語っても学生がピンとこないわけですよ(笑)。最近の学生たちはシゲカヨにイライラしちゃうみたいなんです。きっと生き方が激しすぎるんでしょう。

それよりは、優しい人があまりひどい目に遭うことなく、穏やかに生きる物語の方がよほど安心できるようです。穏やかな女、素直な女……というより「善き女」かな。善き女の時代が来ているのを感じます。だからシゲカヨが反発される一方で、『プリンセスメゾン』の沼ちゃんは学生たちにすごく人気です。

マンション購入に絡んだ大きな波乱とかは起こらないじゃないですか。新居のお隣がちょっとうるさい程度で(笑)、不動産会社の伊達さんとも恋愛になりそうでならない。「身近で共感できる等身大の幸せ」が心地よいという読者が一定数いるのでしょうね。

山本 なるほど。起伏が少なく、ストレスがないことが大事。創作とは起伏のある展開を追体験して楽しむものだと思っていたので、びっくりです……!

『女子マンガに答えがある――「らしさ」をはみ出すヒロインたち』(著:トミヤマ ユキコ/中央公論新社)