5月号の書は「柳に風」です
風に身を任せてさらりと受け流そう
柳の木は、そのさわやかな緑色の葉が見た目に涼やかで、枝ぶりも風情がたっぷり。川辺などで風に身を任せるかのように揺れるさまは、ノンシャランとした魅力があります。大正ロマンを象徴する画家・竹久夢二は、柳の下にたたずむ女性の絵を何枚か描いています。たおやかで抒情的な柳の姿は、夢二の世界観にぴったりですね。
柳にまつわることわざに、「柳に風」があります。柳が風に身を任せて揺れるように、逆らわずにさらりと物事を受け流す、という意味です。柳は無駄に抵抗しないから、かえって折れにくいという意味も込められているようです。
人から悪口や嫌みを言われたり、いじわるをされたりしても、何事もなかったかのようにやり過ごす。それが「柳に風」です。難しいけれど、冷静に気持ちをコントロールして、さらに微笑むことができたら、そんな自分に誇りが持てるし、心の平安も得られるでしょう。
あなたの反応が「暖簾に腕押し」ならば、相手もそのうち嫌みやいじわるをしなくなるでしょう。それに清らかなやさしい心で「柳に風」と受け流したら、「念返し」で悪い念は相手に戻っていきます。
対抗して悪口を言い返したり、いじわるをやり返したりすると、相手と同じレベルまで落ちてしまいます。そういう念を持っていると口角も下がって人相が悪くなりかねません。自分のほうが醜い顔、醜い心にならないようにしましょう。
「柳に風」は、たおやかで優雅な人間になるための、大事なたしなみです。ぜひみなさんも、実践なさってください。
●今月の書「柳に風」