少子高齢化が社会問題となっているのは、もちろん日本だけではありません。フランスのパリで一人暮らしをしている75歳以上の高齢者は、約8万4000人いるといわれています。そんななか、高齢者や生活困難者に美を提供するソシオ・エステティシャンとしてパリで活躍しているのは、ゴダール敏恵さん。そのゴダールさんはフランスの老人ホームについて、「高齢者の終の棲家ではなく、町の一部として存在していくことを目指している」と言いますが――。
ソシオ・エステティシャンの活動
私は、パリから電車で1時間くらいのところにある公立の要介護高齢者施設でボランティア団体の一員としてソシオ・エステティシャンの活動をしていたことがあります。
ソシオ・エステティシャンとは、精神的・肉体的・社会的な困難を抱えている人に対し、医療機関や社会福祉施設の専門家チームと協力しながら、医療や福祉の知識に基づいてケアを行うエステティシャンのことです。
日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、高齢化が進むフランスでは30年ほど前から少しずつ需要が拡大し、容易に外出ができない高齢者のために、ソシオ・エステティシャンが施設や自宅に出向くサービスが一般化してきました。
私がボランティア活動をしていた施設では、改装の際にビューティーサロンを設置していました。
週に2回、美容師が来てくれるのですが、毎週予約はいっぱいです。
ビューティーサロンの横には、小さいながら日用品の売店もあり、入居者は自由に買い物を楽しむことができます。
ここでは、老人ホーム内で一つの社会が形成されており、エステティシャンも美容師もいるのが当たり前なのだと感じます。