ガラスの先に広がる夢の世界

私が通っていた駄菓子屋さんもまったく一緒で、まさに「お金の勉強」の場でもありました。

そして子どもながらに店主の老夫婦の厳しい視線と空気を感じたものです。

じつは一度だけ、小さなズルをしようとしてこっぴどく叱られた記憶があります。

今思うと、あたたかい目で見守りながらも、悪いことを覚えさせてはいけないという大人たちの責任感から叱ってくれていたのだとわかります。

あの頃の大人は、他人の子どもも自分の子どもと同じように叱ったし、子どもは叱られながら社会のルールを覚えていきました。

大人になり、昭和型板ガラスの作品を見るたびに「店主のおばあちゃんの顔と、懐かしいあの場所がよみがえり、感謝の想いがこみあげてくる」と書いたIさん。

広さ4畳の『ガラスの先に広がる夢の世界』で過ごした時間が、子どもたちの心をこんなにも豊かに育てていたことを、駄菓子屋のおばあちゃんに知らせてあげたいと心から思うのです。

※本稿は、『想い出の昭和型板ガラス ~消えゆくレトロガラスをめぐる24の物語~』(小学館)の一部を再編集したものです。


想い出の昭和型板ガラス ~消えゆくレトロガラスをめぐる24の物語~』(著:吉田智子・吉田晋吾・石坂晴海/小学館)

本書はpieniの吉田智子さん、晋吾さんがホームページやSNSで「昭和型板ガラスの想い出」を募集し、集まったエピソードから、24の「昭和型板ガラスをめぐる物語」を収録。さらに「昭和型板ガラス」が詳しくわかる解説や、pieniさんが収集した模様60種のデザイン・名前・サイズ感がわかる「昭和型板ガラス図鑑」も収録。昭和型板ガラスの魅力をたっぷり堪能できる一冊です。