人生とは未知の自分に挑戦すること

私は以前、聖路加国際病院で働いていましたが、同病院の理事長だった故・日野原重明(ひのはらしげあき)先生も、「『向上心』は人生を磨く」と、上をめざすことの大切さを語っていました。

「未知の世界に自ら飛び込んで、やったことのないことをやることによって、使ったことのない脳が働き出す」と、チャレンジによって人間の脳が進化するプロセスと、未来に向けて一歩踏み出すことの意識を言葉にしています。

さらに、日野原先生の「どんな困難に直面しても、『ここから始まるのだ』ととらえ直すことができれば、私たちは必ず前進できます。生きていることの意味は自分で探し、勝ち取るものです。それが、つまり生きがいにつながります。人生とは未知の自分に挑戦することです」という言葉は、私たちをどれほど勇気づけてくれることでしょう。

100歳を過ぎても衰えない探究心と好奇心で、生前、いつもワクワクしながら暮らしていたという日野原先生の原動力も、やはり尽きせぬ成長への願いだったのかもしれません。

もっとも、「成長」をめざそうとして、ことさら堅苦しく考える必要はありません。

何か自分が好きなこと、興味があること、魅力を感じることを見つけて、それに熱中していれば、成長は後から自然についてくるでしょう。

楽しみながら学び、学びながら成長する。充実した老後をすごすには、成長が大きなファクターになります。

本を読んだり、映画を観たり、インターネットなどで調べごとをしたりして好奇心を満たしているうちに探究心が湧いてきたら、大学の公開講座で学んだり、図書館をデスク代わりに使ったりしてみましょう。

生活の幅まで広がるかもしれませんよ。

なにしろ、ひとり暮らしの身、24時間自分で好きに使っても誰からも文句を言われないのですから、有効に消化したいものです。

好奇心で目を輝かせながら何かに挑戦する気持ちは、あふれる活気をあなたにもたらし、老いをはねのけてくれるでしょう。

※本稿は、『老いも孤独もなんのその 「ひとり老後」の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

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老いも孤独もなんのその 「ひとり老後」の知恵袋』(著:保坂隆/明日香出版社)

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