波乃 私はずっと新派でやってきたから「新派も捨てたもんじゃないでしょ」と言ったら、「拾ったもんでもありませんよ」。ほんと、憎たらしい(笑)。

まぁ、えりさんも、言いたい放題だったわよね。弟の楽屋に来て、「この芝居、ホンがつまんない」とか……。「今から出番ってときに、何言うんだ」と弟は怒りながら走っていって、そのまま舞台に出た。

渡辺 あんなこと言って、よく絶交されなかったと思います。哲明さんとは、朝まで一緒に芝居や舞踊のビデオを観たり。なんであんなに入り浸っていたのかなぁ。今思えば、不思議でしょうがない。

波乃 ある大晦日、弟が言うのよ。「おねえちゃま、みんな、聞いてください。お正月、一人呼びたい人がいるんですけど」「誰?」「えり子が独身だから」「もちろんいいわよ」。

渡辺 独身時代は毎年、一緒に年越し。ホテルで親族の年越しをやったときも、なぜか私が混じっている(笑)。私も図々しいというか、なんで親戚一同の中で普通にいられたんだろう。

波乃 みんな、それを不思議とも思わないのよね。

渡辺 夫婦喧嘩に遭遇することもあった。哲明さんと妻の好江さん、なぜかテーブルに上がって(笑)。喧嘩の台詞が芝居っぽいから、つい見とれてしまうの。

波乃 「おまえさんは、だいたい……」なんてね。

渡辺 息が合っていて、喧嘩するさまがまるで舞台の『鶴八鶴次郎』みたい。息子二人が「いつもこうなんだよ~」とか言いながら、隅っこでしょんぼり並んでいる光景は、忘れられないです。

波乃 弟夫婦は本当に仲のいい仲間であり、同志でもあったのよね。