「すごまなきゃいけないのに、本番中に私を笑わそうと哲明さんがいろいろ仕掛けてくる」(渡辺さん)

若いときから芝居漬けの日々

渡辺 久里子さんと親しくなったおかげで新派をよく観るようになったけど、初めてフィルムで新派の芝居を観たのは20歳のころ。美輪明宏さんのお宅で、「勉強になるから観なさい」と、花柳章太郎さんが主役を演じた『日本橋』を観せていただいたんです。

波乃 あら、それは初めて聞いた。

渡辺 新派はゆっくり台詞をしゃべるのかなと思っていたのに、すごくテンポがいいのでびっくり。新派に対するイメージが変わりました。

波乃 ところで、どうして美輪さんのお宅で?

渡辺 美輪さんの『愛の讃歌~エディット・ピアフ物語~』の初演の際、演出助手をやらせてもらったご縁で、家に行ってご飯をご馳走になったりしていたんです。

波乃 美輪さんといえば、私が『日本橋』で芸者清葉を演じたとき楽屋にいらして、「あなた、オトコ知らないでしょう」って。「知らなくもないです」と答えたら、「そういうことじゃなくて、あなたの芝居は処女みたいに見える。それじゃダメなのよ、芸者なんだから。そこの上野公園で誰かに抱いてもらいなさい」と言われたの。わぁ、すごい人だなぁと思いました。私の芝居のダメな部分を、パッと指摘してくださった。

渡辺 新派の舞台を初めて生で観たのは、『はいからさんが通る』。原作の漫画が好きだから観に行ったんですけど、すごく面白かった。こういう演目もやるのかと、新鮮でした。