波乃 えりさんの劇団の芝居はいつも行っているけど、さっぱり意味がわからない(笑)。でも、えりさんの空気を感じるだけでうれしい。私、あなたの芝居を観ると、お客さんは幸福を持って帰るんだろうなぁ、と思うの。役云々ではなく、あなたの人間性と言えばいいのか。
渡辺 ありがとうございます。
波乃 良重ねえちゃま(二代目水谷八重子さん)も、えりさんのファン。樋口一葉がモデルの『有頂天作家』のとき、芸者の役なのに羽織をパッとうまく羽織れず、不器用そうに必死で格闘しているさまがチャーミングでかわいかったって。
渡辺 あれは、羽織のサイズが小さかったんですよ。
波乃 それは言い訳(笑)。それにしても私たち、あちこちの劇場の客席でばったり会うことも多いわよね。
渡辺 もう、芝居のチケット代だけで大変。まぁ、久里子さんはお金の心配ないだろうけど。
波乃 あら、そんなことないわよ。歌舞伎に行くときは正装したいから、そのたびに美容院に行って。帰りに食事に行ったら、チケット代と合わせていったいいくらかかるか。弟の新作なんて、リピーターになって8回行ったこともあるし。今77歳だけど、95まで生きたら、もう財政アウトね。(笑)
波乃久里子さん、渡辺えりさんの記事が掲載されている『婦人公論』6月号は好評発売中!