初共演の舞台でアドリブを仕掛けられて

渡辺 初めて久里子さんと共演した舞台は、2002年の『喜劇 地獄めぐり~生きてるだけで丸もうけ』。

波乃 別府温泉が舞台の芝居だったわね。

渡辺 柄本明さんや藤山直美さん、寺島しのぶちゃんと共演して。もちろん哲明さんも。私はヤクザの女親分の役。すごまなきゃいけないのに、本番中に私を笑わそうと哲明さんがいろいろ仕掛けてくる。

絶対笑わないぞとがんばっていたら、どんどんエスカレートして、ある日、久里子さんと直美さんとしのぶちゃんが、いきなり前にバタ~ンと倒れて腕立て伏せの恰好をして……あれ、歌舞伎用語でなんて言うんでしたっけ。

波乃 仏倒れ。

渡辺 なんの必然性もないシーンで、大真面目な顔をして。お客さんはなんのことやら、さっぱりわからない。(笑)

波乃 お客さんに失礼よね。

渡辺 私、おかしくて台詞が言えなくなって、袖に引っ込んじゃった。それにしても、まさか久里子さんまでやるとは……。

波乃 弟に命令されたんだもの。

渡辺 久里子さん、身体が利くのよねぇ。あんなすごいこと、私、とてもできないもの。

波乃 踊りを続けている賜物ね。あの作品、お客様も大笑いしてくださったけど、やっている私たちも楽しかったわよね。

渡辺 由布院温泉に行って、しのぶちゃんと三人でお風呂に入って。

波乃 あなた、私としのぶちゃんの裸をまじまじと見て、「歌舞伎の家の娘って、どうしてそんな立派な身体してるの?」。

渡辺 骨が太くてがっしりしていて、ギリシャ彫刻みたい。もう、舞台に立つために生まれてきたような骨格。私はこう見えて骨は細いから。この二人にはとてもかなわないと思った。

波乃 そんなこと思っていたの?(笑)