将来の配合の選択肢を狭めるリスク

確かに、ダービー馬を輩出できたのはGalileoの血の威力に拠る部分が大きかったかもしれません。

けれども、生産界全般における遺伝子構成の在り方を中長期的に見すえた視点を持たず、そのような目の前の結果オーライの思考がグローバルに蔓延してしまっていないでしょうか。

『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』(著:堀田茂/星海社)

Beauty Is Truth(2004年愛国産)は、The United States、ハイドレンジア、Hermosaという3頭のGI馬を産んでいますが、すべて愛国産の父Galileoです。

そして、You’resothrilling(2005年米国産)は、Marvellous、Gleneagles、ハッピリーという3頭のGI馬を産み、さらに2021年の仏オークス(ディアヌ賞)をその娘Joan of Arcが勝ったことからなんと4頭のGI馬の母となりましたが、これら4頭もすべて愛国産の父Galileoです。

ついついこれら各馬のGI勝利はGalileoの威力のように言われがちです。

しかし、繁殖牝馬が生涯に産める数はせいぜい10数頭なのですから、複数のGI馬を産むこと自体が尋常ではないのです。

そんな「母の力」を持つ系統に安易にGalileoの血を注ぎ込んで、将来の配合の選択肢を極端に狭めることにリスクを感じる生産者は果たしてどの程度いるのでしょうか。