甲斐大和駅前にある武田勝頼像。岡崎クーデター失敗を知った勝頼はどのように進軍したのかーー(福井市。写真提供:Photo AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第20回では、信玄(阿部寛さん)亡き後も圧倒的強さを誇る武田軍に、岡崎城の総大将・信康(細田佳央太さん)らは苦戦を強いられます。瀬名(有村架純さん)や亀(當真あみさん)も負傷兵の手当てに走り回る慌ただしい状況の裏で、ある陰謀が動き出し――といった話が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第39回は「武田軍は長篠までどう進んだのか」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

ノコギリ引きの刑に処された弥四郎

前回は、一般的に「大賀弥四郎の造反」として知られる一件が「岡崎クーデター」として語られました。

弥四郎は家康に目をかけられ、「抜擢人事はなかなかない」(たぶん造反や謀反を警戒するため)戦国時代において、異例ともいえる出世を遂げた人物。

ドラマでは信康の妻・五徳姫から「これ以上なくむごいやり方で処罰せよ」と言われていましたが、実際、三河武士団の秩序を破ってまで重用した弥四郎に背かれた家康は激怒し、彼をノコギリ引きの刑にしたとか。

温厚なイメージのある家康にもそんな一面があったんだ、と驚かされる逸話です。