自分のことは20代の頃よりずっと好き

なにがどう想像と異なるって、生活にまるで彩りと余裕がないのだ。ゆったり生きる力がない。金銭的余裕がないわけでもないのに、馬車馬のように働く理由が自分でもよくわからない。

半世紀も生きれば、人間としてもっと高尚になるとも思っていた。その象徴が、食器を集めたりヨーロッパに旅行したりというあたりが私の想像力の限界で、そりゃ気高くなれるわけがない。

だが、手頃な価格帯の無駄遣いを好み、休日はインディープロレスの観戦に血道を上げ、世話をする子どもも夫も親もいないのに常にバタバタ生きている自分のことは20代の頃よりずっと好きだ。寂しい、空しい、という気持ちに足を掬われずに済むのは常にバタバタしているからだし、「生活に彩りがない」とは先述したが、プロレス観戦によって心は常に無限の彩りを湛え、豊かである。