稲垣さんは、料理について「何を作るかは今後一生決定事項」だそうで――(写真提供:Photo AC)
人生100年時代、物価の高騰、戦争、災害など暗いニュースが続くなか、老後の「経済的な不安」は誰しも抱えているもの。そんななか、「お金に頼らない生き方」を実践しているのは、朝日新聞社を早期退職後、フリーランサーとして活躍している稲垣えみ子さん。稲垣さんは、夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしの「楽しく閉じて行く生活」を模索中です。その稲垣さんは、料理について「何を作るかは今後一生決定事項」だそうで――。

キラキラを夢見続けた私

高度成長時代に育った私は、今にして思えば人一倍「可能性」の虜だった。

何しろ幼少期から、世の中には次々と新しいもの、すごいもの、便利なものが登場し、我らのくすんだ生活をどんどんカラフルに、スマートに変えていくのを目の当たりにして育ったのだ。

昨日よりも今日、今日よりも明日、よりリッチになるために、つまりは目の前にあるキラキラした「可能性」に向かって努力することが人生なのだと思って半世紀を生きてきた。

食べるものだってそうだ。

小学生の頃に日本に初上陸したマクドナルドのコッテリした美味しさに驚愕した私は、青春時代はフレンチやイタリアンに夢中になり、社会人になりお金に余裕ができると高級寿司や懐石を食べる贅沢も覚えた。

そのように舌が肥えてくると、家で作る料理もどんどん「進化」した。