母の手紙には怨念がこもっているようで、始末するのが怖い(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは愛知県の70代の方からのお便り。母親から「自分が死んだら読むように」と渡された手紙に書いてあったのは――。

手紙の後味

母が亡くなったのは、もう10年以上前のこと。亡くなる直前、母から「私が死んだらこれを読むように」と手紙を渡されていた。

読んでみて驚いた。「何年何月何日、あなたに言われたこういう言葉に傷ついた」というようなことが連綿と書かれていたのだ。昔から母とはうまくいっていなかった。それなのに当時離婚して疲れていた私は、子どもを連れて母のところへ戻る。実家のすぐ近くに自分も通った小学校があるし、働くうえでも便利という計算もあった。

しかし不純な動機で始まった同居はすぐに行き詰まることに。10年間我慢し、子どもが他県の大学へ入学したのを機に私も母の家を出た。子ども抜きで母と二人暮らしをすることは耐えられそうになかったからだ。

手紙にはそのことも「ひどい仕打ち」「裏切りだ」と――。母は、子どもが親に常に仕え、最後まで面倒を見るのが当然と考えているようだった。利用するだけ利用して、と思っていたことだろう。間違ってもいないので余計に苦しい。

母の手紙には怨念がこもっているようで、始末するのが怖い。苦いイヤな味がいつまでも残る。私が死んだ時に一緒に燃やしてもらおう。自分は周りの人に恨みつらみを残さず、この世からおさらばしようと思う。


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