ボケてきてからでは、お金を使っても楽しめない

それでも高齢になってなお、「将来が不安だから備えなくては」とお金を節約しようとしたり、さらに貯金しようとしたりする人もたくさんいます。

しかしながら、年金をもらえる年齢であれば、病気で入院することになっても、国の保険制度のおかげで支出はかなり少なくてすみます。

『シン・老人力』(著:和田秀樹/小学館)

こうした国は、世界中を探しても多くはありません(北欧のように医療費や介護費が基本的に無料という国もありますが、税金の負担率は極端に高い)。

世界有数の保険制度を支えてきたのは、今、高齢期にあるみなさんやその先輩たちです。頑張って働いて支えてきたのだから、必要なときが来たら遠慮せずに甘えていいのです。

ですから、体を動かすことができて、頭もしっかり働いているうちは、人生をしっかり楽しんでおきたいものです。お金は元気なうちに使わなくてはいけません。

設備の充実した病院で個室に入るにはそれなりにお金が必要ですが、そのためにお金を貯め込んでおくのは本末転倒でしょう。

思うように動けなくなったとか、ボケてきてからでは、せっかくお金を使っても楽しめないし、今さら老化を遅らせるメリットは期待できません。

約2000兆円に上る日本の個人金融資産のうち、約7割を60歳以上がもっているとされます。その膨大な金融資産が使われないまま、しかも多くが超低金利の金融機関に貯め込まれています。

お金が使われないとなかなか景気は上向きません。日本の経済が停滞したままでは、次世代への負の遺産が積み上がるばかりです。これはゆゆしき問題です。

子どもや孫のことを考えるのであれば、財産を残すことよりも、次世代の彼らがよりよく生きられる社会であるように、どんどんお金を使って経済循環をよくするほうがよほど合理的です。