写真提供◎AC
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第42回は「優先席の利用を他人が決める権利などない」です。

美談とされる話に私はギョっとした

先日、電車の優先席で「ここはあなたが座る席じゃない」 手足3本失った男が注意されるも...感謝したのはなぜなのか【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ J-CASTニュース

という記事を目にした。事故により両足と右腕を失った人が優先席に座っていたところ、義足が見えなかったのか、他の乗客から「ここはあなたが座る席じゃない。違う席に移りなさい」と注意されたそう。そこで、障害者手帳を見せたところ、注意してきた人は謝った。この記事で気になったのは以下の部分。注意された人は注意してきた人に「感謝」を伝えたのだと言う。

”優先席に座っていて気になった人に声をかけるという女性の行動が素晴らしいな、と僕は思いました。注意した相手がたまたま障害のある僕だったので謝られてしまいましたが、この女性のような人がいると、優先席が必要だけど立っている人が座れる機会が増えると思ったからです。

その女性が今後、同じような場面で発言しづらくなったら困るので、「あなたのように注意してくれる人のおかげで、本当に座るべき人が座れることもあります。声に出していただいてありがとうございます」とその時感謝を伝えました。”

この記事に、いい話、ほっこりというコメントもついていたが、私は正直ギョっとしたし、ゾっとした。
この話が美談として成立するのは、視覚的に分かりやすい障害を持った人と、見た目で優先席に座るべき人か判断したい人の間だけで完結しているからだろう。
注意された人が身体障害者で、手帳を持っていたから誤解が解けたが、そうでなかったらどうだろう。どうやって障害や疾患を説明すれば、注意してきた人は納得するのだろう。