10曲目となるシングル「まちぶせ」との出会い

両親と約束した、タイムリミットの1981年。私は、『プリンプリン物語』の主題歌を別に数えて、次の10枚目のシングルを一区切りとし、それを最後に歌手をやめることを決めていました。中途半端なまま活動を続けるのがイヤだったのです。これは自分の胸の中だけに留めていたことで、周囲の誰にも話していません。

そんななか「この曲なんだけど」とスタッフさんが持ってきてくれたのが、荒井由実(現・松任谷由実)さんが作詞作曲し、1976年に三木聖子さんに提供された「まちぶせ」でした。

その瞬間「私、三木聖子さんが歌われたレコードを持っています!歌詞も全部覚えてます!」と、身を乗り出してしまって。なぜなら名古屋の東京音楽学院に通っていた高2の時に、課題曲として出された曲だったからです。淡々としたメロディー、歌詞の内容……。16歳の女の子にはすべてが衝撃的でした。

その一方で、「いい曲だなあ。それに私自身も似たような体験をしたことがある。歌詞に描かれた女の子は私に近い気がする」と感じてもいて。スタッフさんたちに「この曲がいいです!ぜひ歌わせてください!」と自ら申し出たのは、その時が初めてです。

とにかく「まちぶせ」を歌えること自体が幸せで、キャンペーンで訪れたデパートの屋上や店頭で、「1人でも今日この曲を聴けて良かったな、いい歌だなと感じてくれたらそれで満足だわ」と思いながら、心を込めて歌っていました。おかげでどこへ行っても新鮮な気持ちで歌えましたし、何より楽しかった。結果、曲は大ヒットして、その年のNHK紅白歌合戦にも出場することができました。