フェムゾーンの老化で頻尿や尿漏れも

尿に関するトラブルも、フェムゾーンの老化によって起こる現象です。尿道や膀胱など排泄機能をつかさどる骨盤底が、コラーゲンや筋肉の減少によってたるみ、尿道を締められなくなってしまう。

すると、咳やくしゃみをしただけで尿が漏れる「腹圧性尿失禁」を引き起こすことに。また、頻繁に尿意を催す「過活動膀胱」も、膀胱などの粘膜の萎縮や骨盤底のゆるみが原因だと考えられています。

フェムゾーンのかゆみや性交痛、尿トラブルは、かつて「老人性腟炎」と言われていましたが、2014年よりGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)と定義されました。これは進行性の疾患であり、閉経後の女性の約半数に見られます。

性交痛を訴える日本人女性の数は多くありませんが、それは年齢を重ねるほど性行為が少なくなるから。65歳以上の日本人女性の性行為率は現在15%程度。そのうちの約20%が性交痛を感じているという報告があります。

年齢を重ねてもセックスをする習慣のあるイタリア人においては、70%も性交痛を感じているとか。GSMという概念の再設定があったのも、そういう事情があります。私は性行為の有無は個人の価値観でよいと考えていますが、フェムゾーンの違和感や衰えを知るひとつの手段であるのは間違いないでしょう。

もうひとつ、フェムゾーンの大きなトラブルの代表的なものとして、骨盤底障害である「骨盤臓器脱」があります。「腟からピンポン玉のようなものが出てきた!」と婦人科を受診する人がいますが、これは腟から骨盤内の臓器(子宮、膀胱、腟、直腸)が出てきてしまっている状態。出てくる臓器により「子宮脱」「腟脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」と呼ばれます。

原因は、骨盤底のゆるみ。骨盤底が臓器を支えきれなくなり、下がった臓器が出てきてしまうのです。下着などに触れると出血したり痛みを感じたり。頻尿や尿失禁を招くこともあります。自分の手で中に戻すこともできますが、重症の場合は手術などの治療が必要です。

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