最後の試合は「4番、サード」
チームには必ず「卒団式」と言うものがある。
お世話になった監督コーチの言葉、これまでの試合の動画やスナップを繋いで作ったビデオ上映、本人たちの涙の言葉など、親にとっては『南極物語』のタロとジロが遠くから走ってくるのを観るのと同じくらい、号泣必至のイベントである。
ところが、私は今まで一度も卒団式で泣いたことがない。試合に勝って泣くことはよくあっても、なぜか野球の最後では一度も泣けないのだ。
先日翔大の高校の野球部で、引退試合をしていただいた。
夏の大会が迫る中、ベンチ入りできなかった3年生を中心に最後に全員ベンチに入って試合をさせてもらった。
よくニュース番組で特集されて見たりしていたが…
たぶんテレビを見ていた時の方が号泣していた気がする。3年間ここにかけてきた思いは皆同じ、仲間の一員として野球をやれる最後、思いっきり楽しもう!
やーーー!!みたいな、とても清々しく明るい雰囲気のなか、試合が始まった。
遠方ということで保護者のサポートが何一つお手伝いできなかったのに、試合の様子はいつも速報で流してくださって、息子が活躍した試合の動画や写メをたくさん送ってくださった、野球部の保護者の皆さん。むしろその方がありがたくて涙の出る思い。本当にお世話になりました。
元木翔大、最後の試合は「4番、サード」。
立派な球場の電光掲示板に名前が出て、母親なら涙が滲んでよく見えないような場面。
「おいおいおい…」
ひそかに私は電光掲示板にツッこんでいた。不安しかない。怪我から回復したとはいえ、いくらなんでも4番、て…。