正しい判断を取り戻した飼い主さん

その様子を見たキミコさんは、老犬を数日間、預かると彼女に申し出た。

「シッター料はいらないです。私が責任をもって預かるので、その間、あなたはゆっくり休んでください。夜はぐっすり寝て、朝も起きたい時間に起きて、昼間はお買い物にでも行って、好きなことをすればいいですよ」

キミコさんは、彼女がゆっくり休むことができれば、きっと考えが変わるだろうと思ったのだ。

数日後、キミコさんのもとに犬を迎えにやってきたお客さんは、落ち着きを取り戻し、驚くほど晴れ晴れとした表情だったという。

笑顔で愛犬を抱きしめ、
「ありがとうございます。この子の最期のときまで一緒にいます」
とキミコさんに言った。

その後、愛犬は飼い主さんの腕の中で息を引き取ることができた。わずか数日間、愛犬の介護から解放されることで、飼い主さんは正しい判断を取り戻すことができたのだ。

もし、キミコさんが手を差し伸べていなければ、彼女はまともな判断ができないまま愛犬の安楽死を選び、きっと自分を責め続けて、大きな後悔をしていただろう。