和田先生「地域に根差した町医者は、大学病院の医師よりも高年者医療の臨床経験が豊富です」(写真提供:Photo AC)
65歳以下の場合、うつ病にかかる割合はおよそ3%。それが、65歳以上になると5%に増えるといわれています。定年退職後に自由な時間を楽しむはずが、不安やストレスで悲観的に日々を過ごしている方も多くいらっしゃいます。「65歳から先、体と脳は確実に老いていくが、心だけは、自分次第で若がえる」と語るのは、高齢者専門の精神科医である和田秀樹先生。和田先生いわく「頼りになるかかりつけ医=主治医を見つけること」が大切だそうで――。

主治医は大学病院の医師よりも地域に根差した町医者を

心の若がえりと医療とのかかわり方をお伝えしていきましょう。

65歳からやっておきたいことは、かかりつけ医(主治医)を見つけることです。

加齢とともに、心身の不調は次々に出てきます。不調を感じたときに迷わず相談できる医師がいると、心のアンチエイジングの一環として、大変に心強いものです。

通常、かかりつけ医は、自宅に近い内科医院、つまり町医者がなります。

ところが、ときどき、何かあったら大学病院の医師に診てもらいたい、という人がいます。

とくに多いのが、「東大病院で治療をしてほしい」という意見です。たしかに、日本最高学府の病院であれば、最先端の治療が受けられるだろうと考える気持ちはわかります。

しかし、高年者(65歳以上の人々)にとって大学病院ははっきり申し上げて、「治療する場所」として、ふさわしくありません。

大学病院は専門分化が激しいため、患者さん全体を総合的に診ていく「高年者医療のスペシャリスト」がいないからです。しかも、どの医師に診てもらうのかを決めずに大学病院に行けば、あまり腕のよくない医師や経験の浅い医師に回されてしまう、ということも起こります。

一方、地域に根差した町医者は、大学病院の医師よりも高年者医療の臨床経験が豊富です。健康に関する日常的なアドバイスも的確にしてくれるでしょう。