「そんな色物の自分が50日間も興行を行ってだいじょうぶだろうか、お客様は来てくれるだろうか、と当初はだいぶ心配もしました」(撮影:木村直軌)
ウグイスやカエルなど、動物の鳴きまねを代々継承してきた「江戸家猫八」の名跡が7年ぶりに復活して、話題になっている。2016年に亡くなった先代(四代目)の長男・江戸家小猫さんが23年に五代目を襲名するまでには、長い闘病生活という困難があったという(構成:山田真理 撮影:木村直軌)

「色物」の自分が寄席のトリを務めて

今年3月、上野の鈴本演芸場で幕を開けた「五代目江戸家猫八襲名披露興行」は、5月の国立演芸場をもって元気に完走することができました。計50日間の興行でした。

動物ものまねという「色物」が披露興行をさせていただくのも異例なら、寄席の興行でトリを取らせていただくのも異例中の異例。そもそも色物というのは、寄席の芸に「色を添える」存在です。

落語と落語の間に出ていって場の空気を変え、お客様に心機一転、次の一席を楽しんでいただく役割があります。もし時間が押していれば短めに終え時間を調整する。寄席での花形は落語ですから、色物というのは本来、トリを取らないものなのです。

そんな色物の自分が50日間も興行を行ってだいじょうぶだろうか、お客様は来てくれるだろうか、と当初はだいぶ心配もしました。けれども、寄席演芸ファンの皆さんが新しい猫八の誕生を心待ちにし、最初の鈴本演芸場を盛り上げてくれました。

さらに口コミで「この披露目は見ておいたほうがいい」とSNSで発信してくださった。そのおかげでご新規のお客様も増えていき、新宿、浅草、池袋、そして国立演芸場と連日ほぼ満員の大盛況。コロナ禍で苦労した寄席の席亭さんにも、喜んでいただくことができました。