なかなか寝つけない…、途中で何度も目が覚める、といった睡眠不足が原因で疲れがとれず悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。「睡眠不足によって重大な病気を招くことがあるだけでなく、ぐっすり眠れない背景には危険な病気が潜んでいることもある」と語るのは、睡眠総合ケアクリニック代々木理事長の井上雄一先生。井上先生「年齢を重ねるにつれ、睡眠時間は徐々に短くなっていきます」と言っていて――。
Q:加齢とともに睡眠時間が短くなっているように思います
A:若いころはそれこそ何時間でもよく眠れたし、休日などには二度寝、三度寝をして昼過ぎまで寝るのが当たり前だったという人も多いでしょう。ところが、年齢を重ねるにつれ、睡眠時間は徐々に短くなっていきます。
10歳くらいまでは8〜9時間は眠っていますが、15〜25歳くらいになると7〜8時間ほどになります。さらに40歳代以降になると6時間半くらいとなり、70歳をすぎると5〜6時間に減っています【→グラフ】。
このように睡眠の持続時間は年齢とともに短くなる傾向があるのですが、その理由は加齢によって睡眠が浅く分断されやすくなっていくことと、必要とする睡眠時間が少なくなっていく傾向のためだと考えられています。
若いころと比べると、加齢によって活動量や基礎代謝(人が生きていくために最低限必要なエネルギー量)も減少します。そのぶん脳やからだの休息に要する時間も減ってくるため、睡眠時間も短くてすむようになるのです。
また、高齢者では体内時計も加齢によって変化し、体温やホルモン分泌など睡眠にかかわる機能の生体リズムが前倒しになります。早寝早起きになるのはこのためです。
とはいえ、睡眠時間の長短には個人差があります。4〜5時間眠れば十分という人もいれば、少なくとも9時間は寝たいという人もおり、年齢だけを根拠に何時間眠ればよいと判断することはできません。
重要な点は、睡眠時間が短くなっていてもそれが加齢によるもので、日中の活動に影響がなければ不眠ではなく心配はいりませんが、眠気やだるさなどの不調があり、昼間の生活に支障が出ているなら原因を探って対処する必要があるということでしょう。