体のだるさは、心の弱さではなくB型肝炎のせい
「これ以上、歌手を続けていくのは難しいのかも……」ということは、病気になった時にも考えました。1987年、27歳の時です。
ちょうど初のミュージカル出演を控え、稽古に追われている時期でした。その少し前に頭痛か何かで病院にかかった際、血液検査で医師から「あなたはB型肝炎のキャリアですね」と告げられていたんです。また「今はなんともないけど、できれば定期的に肝臓の数値をチェックしておくこと。それと、ケガをした時に他の人に血がつかないよう気を付けてください。この病気は血液で感染しますから」とも。B型肝炎という病名を聞いたのは、その時が初めてでした。
その後、ミュージカルの稽古が始まり、私も他の出演者の方々と一緒に歌ったりダンスをしたりしていたのですが、いつまでも疲れが抜けなくて。朝起きるのもつらいし、出かけるのもだるくてつらい。ひどく体が重く、食欲もない。他の皆さんは毎日元気に稽古に打ち込んでいるのに、なぜ私だけこんなにつらいのか……。
最初は精神力の問題だと思っていました。認めたくはないけれど、舞台のプレッシャーに負けているんだ、心が弱いんだって。こんなんじゃダメだよ自分、とずっと思っていたんです。でもそんなストレスがいけなかったのか、ある日めまいで倒れてしまって。担ぎ込まれた病院で一泊することになった際、「そういえば定期的に血液検査をするよう言われていたっけ」と思い出し、「すみませんがついでに」とお願いしたんですね。
すると後日、事務所に「再検査の必要があります」と電話がきて、仕事の合間に再度検査を受けることに。そこでようやく「B型肝炎を発症しています。即入院です」と診断されたのです。尋常ではない体のだるさは、私の心が弱かったからではなくB型肝炎のせいだったんですね。
それでも私はのん気に「いえいえ、10日後にはミュージカルの幕が開くので…」なんて言っていたのですが、医師に「仕事と命、どちらが大事ですか!」と言われて観念するしかありませんでした。急遽、舞台をキャンセルして入院することになりました。