「BaBaピザ」の仲間たち(撮影:藤澤靖子)
人生後半に新たな扉を開いた人のなかには、仲間がいたからこそチャレンジできた人もいれば、勇気を出して一人で未知の世界に飛び込んだ人もいる。さまざまな方法で「好き」を行動に移すことができた女性たちに会いに行ってみると――(撮影:藤澤靖子)

「よし、ここだ!」

取材当日、房総半島は台風の影響であいにくの天気。そんななか、「BaBaピザ」の店内は活気ある声が飛び交っていた。「持ち帰り18枚、昼前に取りにくるって」「職場の皆で食べるんだってさ」「ありがたいねえ」。

ここは、その店名の通り73歳から86歳までの「BaBa(婆)」たちが切り盛りするピザ専門店だ。2019年にオープンし、週3日、昼の4時間だけ営業。地元の食材を生かしたピザと元気な6人の姿が話題となり、今では全国から客が訪れる人気店に成長している。

店を立ち上げた当時、メンバーの年齢はすでに70~80代。「普通は体が重くなって、何をするにも億劫になる年頃だよね」とリーダー格の橋本京子さんが切り出すと、「やっぱり仲間がいたからできたことじゃない?」と高宮孝子さんが答える。

九十九里浜に近く、周囲は野菜畑が広がる千葉県山武(さんむ)市蓮沼地区。始まりは、現在85歳の京子さんと86歳の小林トキさんが、50年以上前に婦人会で知り合いになったことだった。

婦人会がなくなった後、京子さんが絵手紙や陶芸などの趣味を楽しむ「笑(しょう)の会」を立ち上げ、そこに孝子さんたち一回り年下のメンバーも加わった。

「地域で行事があると、お茶汲みなんかで駆り出されていたの。そういうボランティア活動で、お互いの人柄を知った感じかな。いろんな都合でやめていく人がいるなかで、今いるのは、最後まで残った最強メンバー(笑)」と京子さん。