去年の秋、ふとヤマユリのことを考え始めて、調べていた(あたしはなんでも調べる。そして時間が潰れていく)。

ヤマユリを思い出したのは、「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」という絵に描かれたヤマユリを思い出したからだ。テートギャラリーにある。それを見たのは、最後に夫と、もうあまり歩けなくなっていた夫とロンドンに行ったときだ。二十分くらい自由時間(ひとりになる時間)があり、あたしはこれを見たくて、館内を探したが見つからず、係員をつかまえて「リリーリリーなんとかという絵が見たい」と言ったら、たちまち案内してくれた。そのとき夫は別のところにいたのだが、たぶんこういう絵は嫌いだったのだ。きっと嫌いだとあたしは思っていた。それでひとりで見ようとして、ひとりで見たのだった。

カサブランカがヤマユリを元にして作った品種だと知った頃、生協のカタログの中にカサブランカの球根を見つけたので注文してみた。届いた球根は箱入りで、すぐに植えろと書いてあった。だからあたしは立ち上がり、庭に出て、空いた鉢をきれいにして、底石を入れ、土を入れ、球根を植えた。

あたしは何につけても、しめきりも家事全般も税金の申告も、後回しにできるものなら後回しにするのだが、園芸と犬猫の世話だけは、どういうわけかそういうことがない。

生協で買った後、ホームセンターでも「今が植え時」みたいな広告が目についたから買った。行く先々の園芸屋でも買った。最後には「ラストチャンス! まだ間に合うカサブランカ! 球根半額!」なんていうのを買いあさった。