妄想と美化の産物であった名作の女性像
今回取り上げた作品の多くで描かれる女性像が、妄想と美化の産物であることには呆れますが、そうは言ってもどれも100年読み継がれてきた名作ばかり。
作中の女性たちも、結婚する以外に女性が生きていく手立てがなかった時代に、なんとか自我を確立するべく、あがいている。そこがご都合主義の通俗小説とは異なり、多くの読者を獲得したゆえんでしょう。
最終章で取り上げたのは、本書唯一の女性作家である宮本百合子の『伸子』です。本を読む女性が増えてくると、「書きたい」女性も現れる。主人公の伸子は最後まで死なないし、自分の意思で恋愛を動かす力強い女性です。彼女たちが描く女性像は、明らかに男性作家のそれとは違います。
本書執筆にあたって読みなおすうち、時代背景を色濃く映し出す青春小説は、大人になってから読んだほうが面白いと改めて気づかされました。
時代背景も考慮したり、自身の経験と比べたりしながら、ぜひ原典を改めて読んでほしいと思います。