家族が揃って食事をする日は、秋川さんが腕によりをかけてご馳走を作る

正直、死ぬのは怖いです。死が身近な年齢になったからこそ、そう感じます。よく「いつお迎えがきてもいい」とおっしゃる方がいますけれど、私はまだその境地に達してない。モモを残しては逝けないですし。

年をとるのも本心はイヤですよ(笑)。でも人生を先に歩んできた者として、次の世代に引き継いでいくべきことがある。それが70代の私の役目なのではないかと思うんです。

たとえば、日本には月ごと、季節ごとに行事があり、そこには生活の知恵やさまざまな意味が込められています。お正月にはおせち料理で新年を祝う。桃の節句、端午の節句には子の健やかな成長を願い、お盆やお彼岸には先祖を供養する……。行事と食育を兼ねて、月に一回は娘の家を訪ね、私が作った和食を孫に食べさせることを実践しています。

私は明治生まれの祖母に育てられたおかげで、さまざまな知識を受け継ぐことができました。料理も着物も、祖母が教えてくれたことが基礎になっているのです。将来、孫たちがどこの国で暮らしたとしても、日本文化を誇らしく思い、繋いでいってくれたら嬉しいですね。

私が目指すのは、センスのいいおばあちゃん。ファッションに限らず生き方もね。これまでの経験で培ってきたものだけに縛られていちゃダメ。時代の流れにもついていかないと。今や、スマホを扱えないと電車にも乗れない時代です。私も最初は避けていたけれど、カフェバー仲間の若者に少しずつ教わってマスターしました。

若い人たちと会話することで、旬の情報も入ってきます。若者文化に迎合するのではなく、自分の感性に合う新しい物を取り入れて、何歳になっても暮らしをアップデートしていくことが大切だと思うのです。