(イラスト:太田裕子)
厚生労働省が発表した「令和2年度 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」によると、過去1年間におけるギャンブル等の依存が疑われる人の割合は、全体の2.2%だった。家族や重要な他者の中にギャンブル問題があると回答した割合は、全体の14.4%に及ぶとのこと。また、過去1年間で最もお金を使ったギャンブルは、パチスロ、パチンコ、競馬の順で多いことが分かった。辞めてほしいのにやめてくれない――そんな自分自身や家族に困っている人は多いのではないでしょうか。小野朝子さん(仮名・鹿児島県・主婦・67歳)は、夫のパチンコ通いで苦労し、愛想を尽かした後は見るのも嫌だと避けてきたそう。それでも、やむにやまれず向き合ってみたら――。(イラスト=太田裕子)

結婚式の後、渡してくれた通帳には

わが家は二人姉妹。姉は跡取りとして育てられていたのに、遠くの大学に進学し、そのまま嫁いでしまった。姉の代わりに婿養子を迎え、家名を継ぐことになった私は、当時23歳。「今どき財産もない家に来てくれる男なんていないよ!」と反論したが、両親は「諦めるな。聞いて回れ」と言うばかり。

ところがいたのだ、そんな男が。当時仲良くしていた飲み友達の一人だった。「いいよ。オレ次男だし」。そして取ってつけたように、「君と結婚してもいいなと思ってた」と。両親は大喜びで、さっさと向こうの家と話をつけ、結納、結婚式の手配、新居までも用意。私は両親の勢いに流されるままだった。

当時の私は世間知らずだったのだ。そんな都合のいい男なんているわけがない。地元で大企業として知られる会社に勤めていた夫は、結婚式を挙げた日に通帳を渡してくれた。なぜかその月の給料、11万円の記載があるだけ、貯金はゼロだ。

新居に持参したものは、数枚の着替えと、通勤用のミニバイクが1台。高校卒業後、大企業で5年働いて、全財産はこれだけ?疑問に思ったものの、小遣いは月3万円ほしいという彼の言い分を聞き入れ、残りでやりくりしようと気合を入れ直した。

すぐに長男にも恵まれ、結婚4年目。給料日前には、お金が底をつく生活を送っていた。家中の小銭を集めても100円ぽっち。とにかく給料日まで、3歳の息子に食べさせなくては。

米は3合ある。よし!スーパーへ自転車を走らせた。本日のお買い得品は、新鮮なイワシ。値段は100円也。ああ、これで今月もなんとか乗り切れる……。