稲田さん「財力と時間に余裕があれば、今後の生涯で全ての食事をコース料理にしたいくらいです」(写真提供:Photo AC)
新型コロナウイルスが蔓延して以降、私たちの生活が大きく変化したように、飲食業界にも様々な影響がありました。そのようななか「レストランは物語の宝庫だ。そこには様々な人々が集い、日夜濃厚なドラマを繰り広げている」と語るのは、人気の南インド料理店「エリックサウス」総料理長、稲田俊輔さん。自らをコース料理至上主義者だと言う彼が、とあるレストランで見かけた戦いとは――。

コース料理至上主義

コース料理が好きです。財力と時間に余裕があれば、今後の生涯で全ての食事をコース料理にしたいくらいです。割烹とフレンチを中心に、イタリアンもエスニックも中華も、その他あらゆる料理を毎日コースで楽しみ続けたい。

料理は作るのも好きなので、家では自分で仕込みまでは行い、後はお抱えコックさんに細かく指示を出しておき、夕食の時間になったら一品ずつ仕上げて出してもらうのも楽しそうです。

石油王にでもなったら、すぐにでもそういう生活に移行したいところです。しかし残念なことに、今後の人生で油田を掘り当てる可能性は、限りなくゼロに近い。なので仕方なく、普段はもっとお気軽な日常食を勝手にコース料理化して楽しんでもいます。

幕の内弁当だって、僕にとってはコース料理です。崎陽軒のシウマイ弁当は、カマボコを口取りとし、前菜としてから揚げとアンズを楽しみ、シウマイの2個だけをまずお凌ぎと位置付け、その他のものも順番を決めてビールと共に食べ進め、おかずが7割がた無くなったところでようやくご飯に手を付けて、そのコース料理は完成します。

計画性無く、箸の向くまま気の向くままにおかずとご飯を交互に食べ進めるなんて、もったいなくてできません。

お気軽コースと言えばサイゼリヤもそうです。むしろあの店は、自由にコース料理を組んで楽しむためのレストランです。

かつてそんな当たり前のことをブログに書いた僕は、世間から一斉に珍獣扱いされ、それがきっかけでモノカキのようなことを始めるに至りました。人生何が起こるかわかりませんね。

そんな僕は、言うなれば「コース料理至上主義者」なのかもしれません。確かに極端なところはあります。しかし、そこまで極端でなくとも、世の中の人々はコース料理をあらゆる食事の最上位概念として認識しているはずだ、とは思っています。

いや、少し違うな。最上位概念であって欲しいと願っている、という方が適切かもしれません。