恨みつらみも豊かな人間関係
とはいえ、過去には私にも「生きているうちは負けそうだから死んだら化けて出てやろう」と思うような人もおりました。けっこうけんかもしたし、「ぐぬぬ」と唇をかんだこともあったし、電話をかけてもう一度文句を言ってやろうかと思うときもあったし。
でも、またけんかをやり直すのは「えらいこっちゃ」と思うから、ぐっと我慢しました。だから、あの世から化けて出てやろうと思ったのです。
ところが、みんなだんだんといなくなってしまいました。私より先にあの世に行ってしまったのです。今はもう化けて出る相手もいません。
そして、そういう恨みの気持ちは時間が経って薄らぐこともあり、あの人は化けて出るどころか本当は自分の味方だったのだと思い直すこともあります。
だから、恨みつらみなんていうのもそのときどきのことで、ある意味、豊かな人間関係のひとつと思えるようになりました。こちらが恨み骨髄と思うほどに深く関わってくださって、誠にありがたいと思います。
※本稿は、『老いの地平線 91歳 自信をもってボケてます』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
『老いの地平線 91歳 自信をもってボケてます』(著:樋口恵子/主婦の友社)
老いのトップランナー・91歳の評論家 樋口恵子さん。
脳科学者・瀧靖之教授(東北大学加齢医学研究所)から「樋口さんの生活・習慣は、脳によいことばかりです!」と絶賛された暮らしとは?
ボケるのが怖い人、老後の暮らしを心配している人、まだまだ夢をもって超高齢期を迎えたい人、親や祖父母世代が認知症になったらどうしようと悩む若い人、どんな世代にでも、男女差なく読んでいただきたい本です。