人のいないところに、雑草は生えないのか?
それでは、本当に人のいない場所には、雑草は生えないのだろうか。じつは学生時代から、それはずっと密かな謎である。
雑草は人のいないところには生えない。
もし、深い森の中で雑草を見つけたとしても、それを見つけた人がいる。まったく人がいないわけではないのだ。
本当に人のいないところに、雑草は生えないのか? もしかすると、誰も見ていない森の中に、雑草はひっそりと生えているのではないだろうか?
そういえば「誰もいない森で木が倒れたら、音はするか?」という哲学の問いがあった。
「人のいないところに生える雑草」も、まるで哲学の問いである。人のいないところに生える雑草を、人間は誰も見ることができないのである。
※本稿は、『雑草学のセンセイは「みちくさ研究家」』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『雑草学のセンセイは「みちくさ研究家」』(著:稲垣栄洋/中央公論新社)
<書籍情報>
田んぼさえ見たことがないイマドキの若者を相手に悪戦苦闘する教授にも、オヒシバとメヒシバの違いさえわからなかった学生時代があった。「お前は破門だ!」と言われながらも“雑草戦略”で生き抜いてきた過去の記憶と、「教えない先生」として学生の成長を見守る現在が交錯する。ベストセラー作家でもある「みちくさ研究家」がつづる、雑草学研究室の青春譜。 人生で大切な“草”知識、雑草レベルの繁殖力でボーボー育ちます。