ベータマックスとVHSの違い

ビクターさんは、たぶんアメリカといろいろ話したのだろうと思います。アメリカ人はテレビをタイムシフトして見ようという人などほとんどいないので、ソフトウェアとして見るのがいいのではないかと言われたようです。映画を考えると、2時間必要になる。

だから、カセットは大きいけれど、2時間にした。そこがベータマックスとVHSの最初に違ったところなのです。

『人の力を活かすリーダーシップ: ソニー躍進を支えた激動の47年間 錦織圭を育てた充実のリタイア後』(著:盛田正明/ワン・パブリッシング)

画質のクオリティは、ソニーのほうがはるかに良かったのですが、いざやるとなったら、向こうは2時間、ソニーは1時間、それが勝敗の分かれ目で、残念ながら、世界ではソフトウェアを見る人のほうが多かったというわけです。

ただ、テレビを録画して自分の都合がいい時に見るというコンセプトは、世の中に植え付けられました。それは、昭夫の“タイムシフト”というコンセプトが元と言えます。とはいえ、悔しかったですね。

最後の瞬間は、松下さんがどっちに転ぶか、それで決まったみたいです。私は、松下幸之助さんに会って、愛知県の幸田町にあるソニーの工場にも案内したことがあるのです。幸之助さんには、個人的に3回ぐらいお会いしました。

ライバルであっても、その頃の各社の社長とも交流がありました。松下さんだけでなく、シャープさん、三洋電機さんとも大阪へ行くと一緒に食事をしたりしました。