貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第54回は「大人の友情」です。
友達ってどうやって作っていたっけ?
「今、東京駅にいるんだけど、これからご飯一緒に食べない?」
今年で友達になって12年になる親友から連絡が来たのは、18時頃だった。「1時間後なら行けるよ」と返事をし、部屋着を着替えて急いで外に行く準備をする。
高校3年間同じクラスだった親友は、地元が同じで、上京して働くよしみである。高校生の時、高校の近くにある親友の家によく遊びに行った。そして上京してから一時、諸事情で私は親友の家に居候をして世話になり、入院した時頼る人がいなかった私が退院するとき迎えに来てくれた。今でもこうして頻繁に会う仲だ。
最近、ふと思う。毎日どうでもいいことをLINEして、いきなり電話をかけ、今から遊ばないか?と誘い、すっぴんでも、余所行きの格好でなくても全く気にならない。悩み事を何でも話し、相手にいいことがあれば自分のことのように喜び、毎年誕生日に食事にでかける。
そんな友達が、この世に何人いるのだろうか?と。
何人か顔が浮かぶが、忙しくて疎遠になり、なかなか連絡をとらない人もいる。一緒にいるのが当たり前になって、連絡すれば返事があることを疑わず、気を遣わずに素でいられ、気が付けばまた会いたいと思っている。そんな友達は、人生で何人もできるものではない。
大人になって、友達ってどうやって作っていたっけ?と思うようになった。職場の人と仲良くなって、食事に行ったりするようになっても、職場が変わると、しばらくは近況を報告し合っていたはずなのに、時と共にその関係が自然消滅してしまう。そんなことの繰り返し。