「性的グルーミング」という言葉をご存じでしょうか。これについて、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは「子どもと信頼関係を築き、関係性を巧みに利用して性的な接触をする行為」と説明しています。今回は、2500人以上の性犯罪者の治療に関わってきた斉藤さんに、「小児性愛障害」や「子どもの性被害」について解説していただきました。斉藤さんいわく「加害者の共通点は、子どもたちに対してとてもやさしく、彼らの発言を無条件に肯定し、共感していること」だそうで――。
カウンセラー顔負けの「聴く力」
グルーミングにおいて、加害者の欲望がすぐにはむき出しにならないケースも数多くあります。
「おはよう」「おやすみ」など挨拶から始まり、ゲームアプリ上なら共通のゲームの話題を繰り返し重ねて、時間をかけて慎重に関係性を深めていくのです。
また、自分の写真を投稿しているような子どもには「かわいいね」など容姿を褒めて、自尊心と承認欲求をくすぐります。そこには、暴行・脅迫を想起させるような暴力性は見受けられません。
SNSもゲームも、基本的には無料ですが、一部の子どもたちの間には「有料アイテムや有料スタンプを持っていないと恥ずかしい」という意識が共有されているといいます。もちろん子どもには自由に使えるお金は限られているので、そんな心理の隙をつき、有料のアイテムで子どもたちを誘い、手なずけるのも彼らの常套(じょうとう)手段です。
ゲームの世界ではランキングやレベルが上の上級者を尊敬する風潮もあり、子どもたちにとってレアなアイテムやお宝を持っているプレイヤーは「憧れの存在」にもなっていきます。その際、加害者は実際の年齢を偽っていることが多いですが、子どもからすると本当に大学生なのか、社会人なのかはわからないものです。
そのほかにも、メッセージなどのやりとりで子どもが「受験勉強がうまくいかない」など愚痴とも相談ともつかないメッセージを送ると、彼らはすぐさま「大丈夫? 落ち込まないで」などやさしく励ます、ということもよくあります。
共通点は、いずれも子どもたちに対して彼らはとてもやさしく、子どもたちの発言を無条件に肯定し、共感していることです。