笠置さんにとって『買物ブギー』は『東京ブギウギ』と並ぶ代表作に(写真提供:Photo AC)
まもなく最終回を迎える朝の連続テレビ小説『ブギウギ』。24年03月21日には『ブギウギ~時を越える服部良一メロディー~スペシャルコンサート』が放送となり『東京ブギウギ』などが演奏される予定です。そこで今回、笠木シヅ子さんの代表曲『買い物ブギー』誕生秘話について娯楽映画研究家でオトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明さんが記した記事を配信いたします。佐藤さんいわく「『買い物ブギー』は、特に関西ことばに触れる機会のなかったエリアの人々に強烈なインパクトをもたらした」そうで――。

買物ブギー

服部良一と笠置シヅ子のブギウギ路線のなかで、最もインパクトのあるノヴェルティ・ソングの傑作「買物ブギー」(作詞・村雨まさを)の誕生にはこんなエピソードがある。

1949(昭和24)年、服部がひょう疽で入院した。

見舞いにきたシヅ子に「センセ、何か新曲を」と頼まれ、思いついたのが、上方落語の「無い物買い」だった。

それが「買物ブギー」として1950(昭和25)年6月15日に発売された。

「無い物買い」はこういう噺である。

退屈を持て余している喜六と清八が、金物屋で「茄子か胡瓜のつけもんないか?」と尋ねる。

いぶかしがる店主。

看板に「なものるいくき(菜物類・茎)とあるがな」と清八。

「かなものるいくき(金物類・釘)」の看板の「か」の字が隠れていたのを笑ったというもの。

二人は次第にエスカレートして、和菓子屋、魚屋で次々と「無い物買い」をしてゆく。

服部は、この落語をベースに、歌の主人公が公設市場へ行って、様々な店の主人と「おっさん、これナンボ?」とやりとりしながら、買い物していく姿を、コミカルかつスピーディーに描いた。