サンドロ・ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』(部分)<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>
長きにわたって人々に鑑賞されてきた西洋の名画には、薔薇やリンゴなど、よく描かれるシンボルがあります。このようなシンボルについて、ベストセラー『怖い絵』シリーズの作者であるドイツ文学者の中野京子さんによると「ちょっとした知識があれば、隠された画家からのメッセージを探りあてることができる」とのこと。そこで今回は、中野さんの新著『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』から、西洋絵画をより深く読み解く手がかりを一部ご紹介します。

タイムスリップ

肖像画を観る面白さの一つは、当時のファッションを知ること。

とはいえ注意せねばならないのは、ほんとうに当時の人々がそうした格好をしていたかどうか、という点だ。

現代日本人は大事な節目、たとえば七五三や成人式などに和服を着て写真館で撮影してもらうことがある。

そうした写真がたまたま数世紀先まで保存されていたとして、日本の風俗に詳しくない未来の欧米人に、これが21世紀の日本のファッションだった、と納得(?)されても困る。

同様のことが、西洋絵画を鑑賞する我々にも起こりうるのを忘れずにいたい。