「父(故・北村和夫さん)と同じ俳優という職業を自分で選んだからには、できるだけ親のスネをかじらず、自分の力でこの道を進んで認められたい」(撮影:宅間國博)
噺家、硬派な刑事、テロリスト……ひとくせある演技で見る人に強烈な印象を与えてきた北村有起哉さん。現在放送中の朝ドラでは心配性の父親を好演している。家に帰れば2児の父で子育てに奮闘中という、名バイプレーヤーの素顔とは(構成=大内弓子 撮影=宅間國博)

親のスネはかじらないと心に誓った

「いつか朝ドラのヒロインの父親役を演じるんだ!」。若かりし頃、自分に暗示をかけるようにそんな目標を立てていました。

父(故・北村和夫さん)と同じ俳優という職業を自分で選んだからには、できるだけ親のスネをかじらず、自分の力でこの道を進んで認められたい。そんな決意を、誰もが知るドラマに出るというわかりやすい例を挙げて、掲げたのでした。

その野望が50歳になった今、『おむすび』でついに叶ったんです。ホッとしました。ただ、喜びはほんの一瞬。「ここで失敗はできないぞ」とすぐに気持ちが切り替わりました。いいパフォーマンスをしなければ、と気を引き締めて撮影に臨んでいます。

僕が演じている聖人(まさと)は真面目な人です。橋本環奈さん演じる娘の結(ゆい)のことも、過剰じゃないかと思うくらい心配する。また、頼まれたら断れずに頑張ってしまうんですよね。なかでも、再び神戸で暮らし始めてからの聖人にそれがよく表れています。