ピアニストであり、「Cateen かてぃん」としてYouTubeでも活躍する角野隼斗さんのドキュメンタリー映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』が、2025年2月28日に公開されました。そんな隼斗さんの母・美智子さんは、コンクール入賞者を100名以上輩出したピアノ指導者です。そこで今回は、美智子さんの著書『「好き」が「才能」を飛躍させる 子どもの伸ばし方』から、美智子さん流・子育てメソッドを一部ご紹介します。
三つ子の魂百まで
長男の隼斗は文字や数字に対する興味が比較的はやかったようで、彼が1歳くらいの頃にはこんなことがありました。
当時、未就学児のグループレッスンで私が使っていたアルファベットの教材を、隼斗もおもちゃがわりにして遊んでいたのですが、私がアルファベットを適当に並べると、「うー、うー」と言って怒るのです。
その教材は手のひらくらいの大きさのパンダ型のスポンジで、パズルのように別のパンダとお互いの手の部分をつなげて並べることができるものでした。
パンダのお腹の部分には、それぞれAからZまでのアルファベット型にスポンジがくりぬけるようになっていて、私はABCの歌を歌いながらそれを並べて子どもたちに英語の初歩を教えていたのでした。
隼斗はいつのまにかその歌を聞いてアルファベットを覚えてしまったようで、順序通りに並んでいないと「違う!」と(もちろんこの頃はまだ話せません)訴えるのです。
「この子は、文字に対する興味が強いのかもしれない」と、普段の生活の中でも注意して観察していると、文字のなかでも特に数字に対する興味が強いようだということがわかってきました。小さい男の子がよく好む車も、隼斗は車種にはまったく興味を示さないかわりに、ナンバープレートに書かれた数字には強い執着を示すのです。
数字が書いてあるものならカレンダーでも時計でもなんでも食いつくように読んだり字の形をなぞったりするので、図書館に行っては隼斗の好みそうな図鑑や数字のたくさん書いてある本をめいっぱい借りて、毎日読み聞かせをしていました。
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長男の隼斗さん、2歳頃。数学への興味を示し始めた時期。ピアノはまだ遊びの延長でさわる程度(『「好き」が「才能」を飛躍させる 子どもの伸ばし方』より)