何度注意しても遅刻がなおらない、場の空気を読むことが苦手……。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの総称である「発達障害」という言葉が一般的に浸透してきています。そのようななか、1万人以上をカウンセリングしてきた公認心理師の舟木彩乃さんは、発達障害の傾向がありながら診断がついていない「グレーゾーン」の人たちがいることも指摘しています。そこで今回は、舟木さんの著書『発達障害グレーゾーンの部下たち』より一部を抜粋してご紹介します。
発達障害はグラデーション
発達障害という言葉が一般的に浸透している中で、「自分は発達障害かもしれない」と思って、意を決して医療機関を受診する人が多くなっています。しかし、診てもらってもはっきりした診断名がつかず、「発達障害の傾向がありますね」とか「グレーゾーンですね」などと曖昧なことを言われることがあります。
医療機関では、発達障害の診断は、問診(現在の困りごとや幼少期の様子、場合によっては家族の話や学生時代の成績表など)や検査(知能検査や心理検査など)などによって総合的に行われます。
発達障害の分類やそれぞれの疾病(しっぺい)の名称には、アメリカ精神医学会によって作成されている「DSM─5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,DSM-5)」が、日本を含めて世界的に使われています。なお、改訂版として、『DSM─5─TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(邦訳2023年6月)があります。
また、世界保健機関(World Health Organization, WHO)による国際疾病分類の「ICD─11(International Classification of Diseases 11th Revision The global standard for diagnostic health information)」というマニュアルも、広く利用されています。