2026年度後期連続テレビ小説が発表されました。タイトルは『ブラッサム』で、脚本は櫻井剛さん、主演を石橋静河さんが務めます。ヒロインのモデルは、大正から平成まで激動の時代を駆け抜け、自由を求め続けた作家・宇野千代(1897~1996)。震災や戦争、4度の離婚に借金も――波乱に満ちた人生でも小説を書くことを決してやめず、一流作家としての地位を確立。98歳の天寿を全うするまでに遺した言葉は、いまも現代人の背中を押してくれます。そこで、最晩年の毎日を綴った随筆選集『九十歳、イキのいい毎日』(中公文庫)より、楽しい人生を続けるポイントを紹介した記事を再配信します。
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大正から昭和、平成と3つの時代を生き、98歳の長寿を全うするまで、現役作家として活躍した宇野千代。晩年まで仕事を続けて人生を前向きに歩んだ彼女の姿勢には、人生100年時代を生きる上でのヒントがたくさんあります。「陽気は美徳、陰気は悪徳」を信条にした暮らしとは――。
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大正から昭和、平成と3つの時代を生き、98歳の長寿を全うするまで、現役作家として活躍した宇野千代。晩年まで仕事を続けて人生を前向きに歩んだ彼女の姿勢には、人生100年時代を生きる上でのヒントがたくさんあります。「陽気は美徳、陰気は悪徳」を信条にした暮らしとは――。
気持ちを伝える手段は手紙
去年の暮に、満90歳の年齢を迎えた私は、何とか健康を維持して、仕事を続けていられることを、とても有難いことと思っている。齢をとると、やはり体のことが第一である。
これでも、自分なりに、体には気をつけて暮している。無理をしないで、書きたいものを書き、ゆっくりした気分で、今年も愉しく過ごして行きたいものである。
こんなことを言っているが、ほんとうの私は、どうも、ちょっと違っていて、何か興味のあることがあると、すぐ、自分の年齢のことを忘れて、そのことの方へ、すぐ駆け出して行ってしまうのである。私は自分で自分のことを、駆け出しお千代などと冗談に言っている始末なのである。
今年も年賀状をたくさん貰ったが、それぞれの人の匂いがして愉しいものである。普段は忙しさにまぎれて、失礼しているのに、便りを貰うと、突然、いろんなことを思い出して、とても懐しい気がするから不思議なものである。
近頃は、何でも電話ですませるのが普通であるが、昔はちょっとしたことでも、すぐ手紙や葉書を書いて、相手に、そのときの自分の気持を伝えたりしたものである。好きな人には毎日毎日、ラブレターのようなものを書いたし、相手からもすぐ返事が来た。
すると私は、またすぐその返事を書いて、ポストへ走った。それが面倒ではなく、何とも言えない愉しいことであった。