自然治癒力を高める漢方の考え方
「漢方は、中国の伝統医学をもとに独自の発展を遂げた日本の伝統医学です。漢方=漢方薬と思うかもしれませんが、広い意味では漢方薬以外にも鍼灸(しんきゅう)、按摩(あんま) 、食養生(しょくようじょう)などが含まれています」と語るのは、横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター特任教授の根本幸夫先生です。
「漢方の考えは、人間が本来もっている自然治癒力(免疫力)を高め、病気に負けない体をつくること。あわせて体質改善を図ることで、不調を緩和するというものです」(根本先生。以下同)
病気の原因を科学的なアプローチで追究し、ピンポイントで病原体を退治する薬を用いたり、異常のある部位を手術などで治療したりする西洋医学とは対照的です。
「漢方では、体を構成する要素を気(精神力を含む根本エネルギー)・血(けつ)(血液やホルモン)・水(すい)(血液以外の体液)の3つに分けて捉えます。健康の基本は、この3つのバランスがとれ、体内を気・血・水がスムーズに巡ること。暴飲暴食や不規則な生活、ストレスなどは気・血・水の乱れを招き、いろいろな症状を引き起こす元凶です。慢性化すると病気を招いてしまいます」
もう一つの特徴は、人間も自然界の一部と捉えること。天体の動きや四季の移り変わりに連動して、心身のコンディションもさまざまに変化し、かかりやすい病気も季節で異なると考え、それに応じて対処も変えるそうです。
「これは『五行(ごぎょう)説』といって、自然界に存在するものは木(もく)・火(か) ・土(ど) ・金(ごん)・水(すい)の5つの要素に分けられるという古代中国の思想がベース。季節も、人間の生命をつかさどる重要な臓器の働きもこの5つに分類され、それぞれが密接に影響し合うとされます」