入浴は簡単な健康習慣(写真提供:Photo AC)
日本人の生活と切り離せないお風呂。「湯船につかるのは、世界一簡単な健康法」と話すのが、これまで7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた「入浴のスペシャリスト」温泉療法専門医の早坂信哉先生です。先生曰く、知っていそうで意外と知らない「正しい入浴方法」があるそうで…。今回はその早坂先生の著書『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』より、一部を抜粋して紹介します。

お風呂に入る人ほど健康寿命が長い

「先生、血圧が170あるのですが、お風呂に入ってもよいですか?」

25年ほど前、宮城県で地域医療に携わっていた私の元に、こんな電話がかかってきました。電話は、高齢の患者さんの入浴介助を行っていた看護職員からでした。

血圧が170mmHgということは、基準値の140mmHgを大きく上回っているので、入浴はしないでください、そのときはそう伝えて私は電話を切りました。

でも、もし血圧が140mmHgだったら安全なのか?

150mmHgだったら?

いったい、血圧がいくつまでなら、お風呂に安全に入れるのか?

教科書の中を探しても答えがなく、文献や論文も調べましたが明確な答えを得ることができませんでした。

その後も、血圧だけでなく、「かぜを引いているのですが、お風呂に入っていいですか?」というように、「体調と入浴」についての問い合わせがたびたびありました。これはきちんと研究して、根拠に基づいた判断ができるようにするべきだ─。

こうして、私はこれまで医学研究の対象にされていなかった入浴を、本格的に研究することにしたのです。