「今でこそ、登山に関してお話ししたり、本を出したりしていますが、実は40歳まで山にまったく興味がありませんでした」(撮影:藤澤靖子)
40歳で登山に出合ってのめり込み、現在は日本トレッキング協会の理事も務める市毛良枝さん。世界の名だたる高峰にも挑んできた市毛さんですが、高い山だけが山ではなく、楽しみ方は人それぞれ、と語ります。(構成:篠藤ゆり 撮影:藤澤靖子)

きっかけは山好きな父の主治医

今でこそ、登山に関してお話ししたり、本を出したりしていますが、実は40歳まで山にまったく興味がありませんでした。新宿駅で山帰りの人を見かけるたび、ちょっとむさくるしい人たちだな、と思っていたくらいです。(笑)

40歳の時、父が自宅で突然倒れて入院しました。入院中、50代の担当医師と雑談する機会があったのですが、たびたび登山の話が出てきたのです。

それまで、「登山は死と隣り合わせ」だと思い込んでいましたが、この先生はにこにこと楽しそうに話してくださる。それ以来、いつか山に行ってみたいと思うようになりました。

父は入院して2ヵ月でこの世を去り、本人の意思で献体することに。2年ほどたって解剖所見が届き、改めて件の先生にご挨拶に行った際、なぜか「今度看護師さんたちと山に行く時は、私も連れて行ってください」という言葉が口をついて出たのです。

すると先生はパッと手帳を取り出して、「9月に連休が2回あるけれど、どちらがお暇ですか?」と。あれよあれよという間に、みんなで山に行くことになりました。