夫の介護、コロナ禍、自身の病に直面した女優の小山明子さんは、4年前にお金の悩みが高じてうつ状態になったといいます。小山さんが、家計を立て直すために実際に行ったこととは――。90歳を迎えた今の暮らしを聞きました。(構成:篠藤ゆり 撮影:宮崎貢司)
61歳で失った心の健康と生きがい
2年前の『婦人公論』で、2021年に経済的に行き詰まってうつ病になったとお話ししたところ、ずいぶん反響があったと聞いています。人生100年時代といわれる今、老後資金に不安を抱く方も多いからでしょうね。
今年90歳を迎えましたが、振り返ってみると、私の人生後半は波瀾に富んでいました。最初の大きな危機は、61歳のとき。映画監督だった夫の大島渚が脳出血で倒れ、17年に及ぶ長い介護生活が始まったのです。
なにもかも一人で抱え込んだ結果、精神的に追い込まれて介護うつに。何度か入院もしましたし、結果的に4年ほど苦しみました。
大島が倒れた当初は、まだ介護保険制度がない時代。車椅子のレンタル代からヘルパーさんに支払う費用まで、全額自費でした。多少の蓄えはあったとはいえ、女優の仕事はほぼ休業状態で収入も途絶えてしまい――。私は人が生きていくうえで大事な、「経済」「健康」「生きがい」のすべてを失ったのです。
うつ病が回復にむかってからは、プールに通ったり、ご近所づきあいを始めたり。そのうち介護やうつ病に関して講演をする機会が増え、収入源のひとつとなりました。
大島を見送ったのは13年、私が78歳のときです。介護は大変ではありましたが、女優時代とは異なる人とのご縁が広がり、ご近所友だちも含め「人(ひと)財産」に恵まれたと思います。
夫の死後も、東日本大震災で原発事故が起きた福島県双葉郡の方々を支えるボランティア活動に引き続き参加するなど、充実した日々を送っていました。