(写真提供:Photo AC)
解剖学者の養老孟司先生は2020年に心筋梗塞、2024年には小細胞肺がんを罹いました。抗がん剤と放射線治療により一度は回復したものの、2025年3月には再発がんが見つかり、現在も治療を続けています。今回はそんな養老先生と、その教え子で東大病院放射線科医師の中川恵一先生による共著『病気と折り合う芸がいる』から一部を抜粋し、養老先生へのインタビューをお届けします。

残された時間という考え方の欺瞞

年をとると、残りの人生というものを考えるようになるようです。やり残したことを整理する、終活が流行っていますね。

僕だったら虫の標本をどうするかという問題があります。でも今ある標本をすべて整理するのはとうてい不可能です。

2022年4月、養老昆虫館(箱根)(写真:『病気と折り合う芸がいる』より)
2022年4月、養老昆虫館(箱根)(写真:『病気と折り合う芸がいる』より)

終活をしようと思っている人は、甘く考えていると思います。やり残したことを整理しようと思っても、そううまくはいきません。誰もがやりかけで死ぬしかないのですから。

いつも言っていることですが、何事も順送りで、遺族は大変かもしれませんが、死後の始末は残されたものに任せるしかありません。